偏差値の信頼度…これはなかなか難しい問題です。
偏差値とはそもそも平均からのバラツキをあらわした数値ですから、
本来ならそのバラツキの指標である「標準偏差」もあわせて
認識する必要があると考えます。
まずはそもそも母集団の中でバラツキが大きいほど、
高い偏差値も低い偏差値も出にくいことは原則として
わかるのではないでしょうか。
首都圏の中学受験の会場テストには主催者の違う複数のテストが存在します。
それぞれで母集団が違い、同じ難関中でも
算出される偏差値はそれぞれ違います。
違う会場テストだと、
学校間の相対的な難易度ですら変わってくる可能性があります。
すべての受験生がすべての会場テストを受けるはずもなく、
母集団も違えば標準偏差も違い、異なる会場テストで参加者には
異なる偏差値を受け取ることになります。
もし仮に4主催者が均等なシェアで会場テスト参加者を集めていると
すれば、特定の中高一貫校の志望者数も当然4分の1ずつになります。
実受験者数が400人の学校であれば、それぞれのテストに100人ずつの
志望者が集うわけです。もちろん受験生が異なる主催者のテストに
参加する可能性を否定しませんが、
実際には志望者数もテストによって偏ることが考えられます。
こうなると学校によって志望者が多いテストと少ないテストでは
偏差値の精度にも差が出て当然でしょう。
進学塾がテストを主催していて、その塾生がそこに参加しているとします。
もし塾によって難関中合格者率に差があるとすれば、
当然それは母集団のレベル差にもなってくるわけです。
今回ブログで取り上げた首都圏模試センターの最新の結果偏差値(80%)ですが、
5年前に比べて一律上昇しているのは、母集団の標準偏差が変化している
ということは考えられないでしょうか。
また、合格ボーダーが消滅する現象(偏差値が算出できない現象)は、
多くの場合で実質倍率が低下している学校が対象で
合否照合をしたときに不合格者が少なくラインが引けない
状況を示しているように思います。
ちなみに東京の男子校・本郷の3次入試(2/5)でも偏差値が出ていませんが、
この入試は受験者数473、合格者42、実質倍率11.3倍という超激戦でした。
これは逆に合格者分布が受験生の偏差値履歴に対して順当ではなかったのかもしれません。
首都圏模試の結果偏差値を5年前のものと比較すると、こうした合否ラインを
設定できない学校が激増しています。
もちろん首都圏模試自体のシェアの問題も考えねばなりませんが、
それよりも志望者数が少ない学校、低倍率の学校などの結果偏差値を算出しない方針は
共感するところがあります。
前年の状況を鑑みて、推定を施す範囲が最小限になっているように思うからです。
偏差値を論じる場合に、この一般公開されている首都圏模試センターのものを
例に挙げることが実は客観的ではないのかもしれません。
でもそれを言い出したら、中学受験の偏差値そのものの信頼度をどこに求めたら
よいのかわからなくなります。
各進学塾が蓄積した塾生のための内部データがこの合格可能性偏差値であると
するなら偏差値に客観性を求めて論じることは無意味だとすら思います。
「偏差値は学校の序列ではありません」「偏差値はあくまでもひとつの目安です」
の文言はそういった構造も含んでいるのです。
一定の期間、中学受験を見守ってきて感じるのは、
進路実績が上昇し、人気を集めるようになった学校、その逆の学校には
数多くのサンプルが存在します。
影響する順序を問うなら
進路実績→入試結果→偏差値
もしくは
入試結果→進路実績→偏差値
でしょう。
ごくまれに戦略的に
偏差値→入試結果→進路実績
この順番を志向する学校がありますが
成功例は非常に少ないと思います。
つまり学校選びにおいて、
真っ先に偏差値に注目してはいけないということです。
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